或る一日
新しい命の誕生の知らせが来たその日に、知人の訃報を受けた。
私はその日、自ら命を投げ打っていく人々のデータ処理を黙々とこなしていた。
頭に何となく佇んでいるモヤモヤした思いを抱えながらも、その日もとあるステージを観ていた。
興奮と光悦、不安とそれを拭い去る安堵。様々な感情を喚起する歌声。素晴らしかった。
ステージ上の彼が最後に歌っていたのは「さよならの瞬間に」
彼の歌を聴きながら、ぼんやりと掠めたのは私よりも先に両親にやってくるであろうその時。
その時が来たら、その時が来たら、
私は平静でいられるだろうか。
涙に際限はあるのだろうか。
感情を感じ取るだけの余力があるのだろうか。
私は身近な人の死を経験した事が無い。
だから、その時が来るのを怖れている。
いろんな感情がマーブル模様になって、決して混ざり合う事は無く存在した状態で
その日久しぶりに会った友人は偶然にも誕生日だった。
命とか生きるとか、死ぬとか。
永遠でもないし、当たり前のことでもないけれど、知らない。わからない。
或るロックンローラーは
「生きてる意味なんて無い ただ生きてるだけだ」って歌ってたっけ。
なんだか無性に、生き死にを考えさせられてしまった。そんな一日。