つまらない喜びに幸せの振りをする


人生の岐路とはこんな突然に来るものなんだろうか。

地元の市民病院で、私の職業が募集されてる。
年齢的にラストチャンス。
将来のことを後回しにしていたツケが今になって回ってきてしまった。


やりたいことも、仕事の遣り甲斐も、気心知れた友人も、そばにいたい人も、日々の楽しみもここに遺して帰るなんてイヤ。
今の生活に不満なんてないのに。


ホンネのところは、まだ帰りたくない。
まだ、というのはいずれ帰らなくてはならない状況を想像してしまうから。


私の家は女姉妹で、姉は嫁に行った身。
両親にもしものことがあれば、世話をするのは私の役目。

「親孝行、したいときには 親は無し」なんて状況、私の家族には起こらないよねなんて楽観的な考えではいつまでもいられない。


遠隔家族会議と多方面の有識者への相談の結果、とりあえず一次試験だけでも受けてみることに。
受かったら、またその時考える。
落ちたら縁が無かったと、今の生活をがんばればいい。
その姿勢だけでも、両親を想う気持ちのポーズに見えないだろうか。

父も母も姉も、皆愛しているし、愛されているのがよくわかる。
愛しているけれど、私はある程度距離を置きたい。昔からそんな子だった。
近くにいると、良好な関係が崩れてしまう。

妙齢なのに、いつまでも独り身だからこんな話になってしまったんだろうか。
やりたい仕事を頑張りたい、っていう気持ちは決して中途半端ではなくて、可能であれば定年までこの仕事をやり遂げたいのだ。

帰りたくない。
だけど。


本当に、その時が来てしまったら、この胸に長年住みついたまま離れてくれない熱い思いを、放たずにはいられないだろう。